何のために
コーチングを何のためにするか。
なぜコーチングなのか、について触れたい。
その前に、少し長い前置きになるが、一つ本を読んだ時の事を話たい。
人間関係に少し悩んでいた時に、内村鑑三にまつわる本を読んだ時に、はっとしたことがある。
何か目を見開かされた気がした。
そこでは、この世界から去るとき、少しでも世の中を良くして去りたい、としたときに、何を遺すか、という話を展開している。
この本だ。
内村鑑三といえば、以前「代表的日本人」という本をプレゼントされ、それを読んだことがある。そこにあるのは、歴史上の五人の偉人を英語で紹介した本である。そこには志を持った人の生涯がつづられていて、それを思い出した。
そう、世の中を良くする。自分の価値観を信じ、志をもって、それを実践する。
こう考えた時に、人間関係を通して、自分の私心にまみれていた自分にはたと気づいた。
なんて小さな世界しか見ていなかったんだろう。目が外に向いた瞬間だ。
自分に関心を持ち、自分の感情を拾う様にしていると、その弊害として、悶々と負の感情に囚われてしまう場合がある。そうすると、精神が弱ってしまう。
そんなときは、目を外に向けた方が良い。私は何がしたいのか。
自分を発見することを通して、世の中をよくしていきたい、というようなことを考えている。
自分を発見することの楽しさ。
では志はなんだろう。根ざす価値観とは何か。
悩んでいる人に手を差し伸べたい。
困っている人の手助けをしたい。
話をして、その人を発見し、そうして自分を発見する。
世の中をよくするには、人を元気にする必要がある。
人に元気を与えたい。人に感動を与えたい。
活力が湧いてくる様な、そうした何かを与えられる人間でいたい。
生きている喜びを与えられること。そうした瞬間を増やすこと。
どうだろう、コーチングをする目的として、自分の肌に合った言葉だろうか。
そう思う、というのと、本当にそう思うか?というのと同居している。
そこで自分に置き換えて思うのは、サポートしてくれる人が欲しい、ということ。
私は自分の悩みを人に相談することをあまりしない方で、自分で抱えがちなところがある。自分で何とかしようというか、自分で消化しようとする。
だからなのか、心を閉ざしがちで、自分と他人との境界線があり、自分をさらけ出す、というようなことができない。
それを発端にしてなのか、感情表現も苦手。
そして、この人みたいになりたい!と心底尊敬することもなく、誰かのファンになる様なこともない。こう書いていくとドライな人間だな...。
でも実は、寂しがり屋な部分もあるし、人と繋がっていたい自分もいる。
そして、自分にアドバイスしてくれる人、自分の成長を願い親身に相談に乗って成長を促してくれる、人生の恩師、アドバイザー、のような人を求めている自分もいる。
心から尊敬し、その人に憧れ、相談し、人間的成長を歩んでいける、そういう存在。
でも、相談は苦手だし、弱さを見せるのも苦手だし、もっと言えば親身に自分のことを思ってくれる様な誠実な人の存在、というのはむしろ稀なのではないか、とも思う。ましてやそんな人とそうした関係になれるだなんて。
そこで、だ。
なら、自分がそうなれたらどうだろう。
悩んでる人にとって、そうした存在になる。その人の心に光をさすような、安心と信頼と成長を与えられる様な、その人の人生の道しるべの一つになるような、そんな存在。
これってとっても重い存在だと思う。同時にとっても大切な存在だと思う。
人生の師、というのは人それぞれいるのかもしれない。
でも私自身は、この人が人生の師である、と強烈に思える人には巡り会えていない様に思う。(他方で、ある面では学ぶべき対象だった、という人物は何人かはいるけど)
その経験がなくて、私がそういう存在になれるのだろうか?
それはわからない。
しかし、少なくともそれを欲する人の気持ちは分かる。
内村鑑三のその本には、資産を遺す、事業を遺す、思想を遺す、人を育てて遺す、というようなことと、よく生きること、が書かれている。
人を育てる。そのために、思想を言語化し、それを事業として行い、世の中に活力を増やす。
人生の師と言ってもらうため、というわけではない。
しかし、確かにその人の人生において、その時期に与えるものがあり、その人の人生をより善くすることができた。
そうした事ができ、そうした事が増やせるならば、それを私はやってみたい。
一人で奮闘している人に、優しく手を差し伸べて、その人が前に進みより善い人生を生きることの手助けをすること。
そうした人を増やして、少しでも世の中をより善くしていくことに関わっていく。
それが私のコーチングの目的、と言えるのかもしれない。
「頑張っている人に、その人が自分の力で前に進む事を手助けし、その人の人生に喜びを増やす。そうした活動を通して少しでも世の中をより善くすることに関わっていく」
それが志を持つこと、そのずっと手前の、いまの心境かな。